Date
2019年3月16日続けてきたこと
最近、「百貨の魔法」村山早紀著という、とある街の百貨店が舞台の小説を読みました。
その第一章の「空を泳ぐ鯨」の中に、その百貨店で10年ほど前に求められたテディベアのご注文内容を記録してあるファイルを探し出すエピソードがあるのです。
舞台の百貨店で電算処理となる以前の手書きのファイルによって過去の注文内容が分かり、お客様の心の中でよじれていた関係を再生させていく道筋になるという設定とでも言いましょうか。(気になる方には詳細は「百貨の魔法」を読んでいただくとして…)
この小説のこのエピソードを読みながらふと先月のことを思い出しました・・・・
先日のこと、22年前にお作りしたお財布の修理を承りました。
齢90近いお客様・・・・
小銭入れのホックが甘くなり、その交換のご依頼(ホック・スナップボタンは消耗部品ですのでいつか必ず交換が必要になるパーツです)
他気になる箇所の修理・メンテナンスを承りました
今とは異なる裏地なしの作り、使用している革も今は廃盤となってしまった革・・・・
イギリスのコンビ鞣しのバッファローのカーフ(※ 同じタイプでインドでなめされている異なるタンナーの革は現行でございます)
顧客カードをチェックしていつ製作したのかを探り出します。
そして年代別に保管してある仕様書・型紙をあたっていきます。(この作業を「百貨の魔法」で思い出したわけです)
永年使用していただいているものですから、どうしても歪み・伸び・縮みが現れています
型紙があれば元のサイズ・形もはっきりしますから、微調整していく中でとても役立ちます
歪み方や革の具合から、どのような使い方でご愛用くださって来たかが推測されます・・・・
ご年配の方なのでゆったりとしたズボンをお履きですがいわゆる尻ポケで使われて来たと思われます
実はお尻の部分、結構汗をかいています。
そして座ることで体重がかかり体温も加わります・・・・
汗には塩分が含まれているのですが、塩分は革には大敵なのです
そういったダメージが見て取れます
水ぶきと乾拭きを何度か繰り返して塩分をできるだけ取り・・・・
それからクリームで油分の補給
ムラは少しだけ薄れました
全体的に肌理は戻り、幸い革も脆くなっておらずまだまだに使っていただけるかなと思います
これからもお客様の暮らしとともに使われていくと嬉しく思います